「SDGs Day」グローバルなSDGs課題解決に挑戦するスタートアップと市民の交流イベント

2023.06.09

2023年3月18日、三井住友銀行神戸本部前の広場において、グローバルなSDGs課題解決へ挑戦するスタートアップ企業と市民の交流イベント「SDGs Day 2023」が開催されました。このイベントは、スタートアップや市内企業、学生などのSDGsに関する取り組みの発表を通じて、市民に新しい価値観を体感し、未来を想像しながら交流してほしいと企画されたイベント。兵庫県と神戸市、国連プロジェクトサービス機関(UNOPS)と共同で実施されたスタートアップ企業の支援プログラム「SDGs Challenge」の成果発表会として開催されました。

2022年度の同プログラムに採択された14社によるピッチ(短時間で行うプレゼンテーション)を行い、これまでの成果を多くの人たちに届けました。イベントでは他にも、市内企業や行政、学生らが集まったトークセッションやパフォーマンスも行われるなど、盛大に行われた「SDGs Day2023」。その当日の様子をレポートします。

■タイムテーブル
— 13:20〜 OpeningAct スティールパン楽団「ファンタスティックス」演奏
— 13:40  オープニングトーク
— 13:50〜 フリートーク「Sustainabilityとは」
— 14:00〜 Startup Presentation テーマ:SUSTAINABILITY
   ▶︎株式会社リプレニティ、AC Biode株式会社、株式会社アルタレー、ZESST by Almatech、株式会社テクノラボ
— 14:15〜 Performance 神戸中華同文学校 舞獅隊 演舞
— 14:20〜 トークセッション 「Developmentとは」
— 14:35〜 Startup Presentation テーマ:DEVELOPMENT
   ▶︎SUN株式会社、株式会社Dots for、NUProtein株式会社、Redge,inc.
— 14:45〜 トークセッション 「Challengeとは」
— 15:00〜 Startup Presentation テーマ:CHALLENGE
   ▶︎BABY JOB株式会社、株式会社農社、CAREN、株式会社eminess、株式会社Liquitous
— 15:15〜  トークセッション 「SDGs実現とアントレプレナーシップ」
   ▶︎神戸市事業「KOBEワカモノコミュニティ・起業体験プログラム」参加大学生、兵庫県事業「県内起業家支援教育事業」の参加高校生が登壇
— 15:45  フィナーレ 神戸ユースジャズオーケストラによる演奏

SDGs Dayのオープニングを飾ったのは、スティールパン楽団「ファンタスティックス」によるドラム缶からつくられたスティールパンという打楽器による演奏でした。軽やかな音色が会場を包み、フェスティバルのような明るい雰囲気になっていきました。イベントでは、「Sustainability(持続可能性)」「Development(開発)」「Challenge(挑戦)」といったテーマが設けられ、それぞれに関連するスタートアップのピッチのほか、企業と学生、行政の人たちが登壇したトークセッションも設けられました。「SDGsとは何か?」をそれぞれの立場や視点から、互いに共有し合っていきました。

「Sustainability」をテーマとしたトークセッションでは、日本酒「福寿」で知られる株式会社酒心館の副社長を務める久保田博信さんが登場。
日本で初めてカーボンゼロの日本酒を開発した経緯を話されました。

続いて、5社のスタートアップ企業がピッチを行いました。

<スタートアッププレゼンテーション>
株式会社リプレニティ
スタイリストによる手持ち服での服選び代行プラットフォームで衣服ロス削減を目指す

AC Biode株式会社
CircuLite(サーキュライト):厄介者の灰を吸着剤、抗菌剤等にアップサイクル

株式会社アルタレーナ
食品生産から消費・廃棄までのカーボンフットプリント可視化、CO2削減支援

ZESST by Almatech
水素を動力源とする高速かつ快適なゼロエミッション水中翼船ZESSTは、海上輸送の脱炭素革命を実現する

株式会社テクノラボ
海洋プラゴミ100%のプロダクト「buoy」を使ってゴミ漂着地と都市をつなぐ仕組み作り

次のテーマの合間には、神戸中華同文学校の舞獅隊による躍動感のある演舞も行われ、文化交流につながる時間もありました。

「Development」をテーマとした市内企業の紹介コーナーでは、2023年で創業100年となったバームクーヘンの老舗・株式会社ユーハイムの代表取締役社長を務める河本英雄さんが登場しました。この会社もまた、次世代に向けて挑戦を続けている1社です。会場では、同社が手がけたAI搭載のバウムクーヘン専用オーブン「THEO(テオ)」による、まるで職人が焼き上げたような美味しいバームクーヘンがふるまわれました。「お菓子には世界を平和にする力がある」とユーハイムが本気で挑む取り組みを、参加者たちは実際にバームクーヘンを食べながら体感していました。

「Development」では、サービスや製品をグローバルに展開する4社がピッチを行いました。

<スタートアッププレゼンテーション>
SUN株式会社
「日本を知り、日本を好きに。自分らしく生きる」日本語教育アプリの提供

株式会社Dots for
アフリカの村集落内に無線ネットワークによるデジタルプラットフォームを提供する

NUProtein株式会社
食用コムギ胚芽から培養肉用タンパク質を合成し、温室効果ガスの低減他に貢献する

Redge,inc.
日本の臨床工学技術を活用したアジア・アフリカ向け医療機器管理教育システム

どのスタートアップ企業も「誰のどんな課題を解決したいのか?」ということが明確で、一つひとつが持続可能な世の中にしていこうと熱意を持って取り組まれていることが伝わってきました。

後半になるにつれ、どんどんと盛り上がっていき、街ゆく人たちも広場に足を留めて、さまざまな発表を熱心に見ているのが印象的でした。
「世の中にはこんなにたくさん面白い取り組みをしている企業があるんだね」と親子で言葉を交わしている光景もありました。

「Challenge」をテーマとしたトークセッションでは、神戸市の今西正男副市長も登壇されました。
春から大学生になる学生から「今までにないことに挑む人たちに、神戸市はどんなサポートをしているのか?」という質問が投げかけられ、今西副市長は「挑戦する中での失敗もあると思うが、その経験を糧にしながらさらに成長しようとチャレンジする方たちに裾野が広がってゆくような継続的な支援をしていきたい」と力強く語りました。

続いて、挑戦の真っ只中にいるスタートアップ企業として、5社がピッチに登場しました。

<スタートアッププレゼンテーション>
BABY JOB株式会社
おむつのサブスリプションサービスなどを通し、子育てに関する社会課題の解決に取り組む

株式会社農社
農業者と消費者をつなぐ商流を開発し、農産物流通の最適化を目指す

CAREN
精神疾患の予防のため、心理療法を学び自己内省を行う短期カリキュラムのサービス

株式会社eminess
ホルモンバランスの影響を受け、変化し続ける女性の心と身体を「食」でサポート

株式会社Liquitous
オンライン市民参加型合意形成プラットフォーム「Liqlid」で民主主義のDXを実現させる

イベントの最後は、SDGsの実現に向けて、自ら大胆に変えていく「アントレプレナーシップ(起業家精神)」についてのトークセッション。
兵庫県の竹村英樹産業労働部長や神戸市の「KOBEワカモノコミュニティ・起業体験プログラム」や兵庫県の「県内起業家支援教育事業」に参加した高校生、大学生らが登壇しました。
兵庫県の未来のつくり方として、「アントレプレナーシップは誰にでも必要で、大事なのは今の世の中を少しでも良くしたいと思い、具体的に行動をしていくかどうかだ。それぞれの得意分野で行動を起こしていけば、いろんな人たちの夢や思いがまとまって、SDGsが実現できるはずだ」と力強く語りました。


不登校の経験から同じ境遇にいる学生を支援する教育事業に携わっているという学生からは「学生の立場で社会のために動けることが広がってほしい」と言った願いも伝えられました。
竹村産業労働部長は「学校だけが人生ではないが、世の中の仕組みを見られるという良さもある。自分の信念のもと自信を持って取り組んでほしい」と学生たちにエールを送っていました。フィナーレでは、神戸ユースジャズオーケストラによる演奏が披露され、一体感に包まれたところで終了となりました。

学生とのトークセッション、ピッチに参加したおむつのサブスク事業を展開するBABY JOBの取締役事業本部長の脇さんは、「SDGs Day」で多くの聴衆の前で発表をして、「SDGsをテーマに事業を話す機会をいただき改めて自分の考えを整理できた。自分たちの事業がSDGsやESG(環境・社会・ガバナンス)の文脈で価値あることを社内外に発信していくことの大切さを感じました」と振り返りました。

スタイリストによる服選びのサービスを通して衣服ロス削減につなげるアプリを開発中というリプレニティ代表の小林さんも「まだ正式にアプリをローンチできてないが、今後多くの方に認知してもらえらよう、みなさんにどんな価値を届けられるのかストーリー立てをしっかりして、アプリを広めていけるようにしたい」と清々しい表情で、これからの活動に気持ちを新たにしていました。

今回のイベントは、兵庫県や神戸市がスタートアップ企業の事業推進を支援する熱い姿勢や世の中を変えることに挑む企業の取り組み、兵庫の未来をつくる学生や市民の視点が知れる機会となりました。

「SDGs Day」に登場した企業のサービスや商品は、これから県民や市民にとって身近になってゆくものばかり。さまざまなサポートや理解が広まれば、新しい未来が拓かれていきます。誰もが挑戦していくことの意味や価値に気づくきっかけになるイベントでした。