<インタビューイー略歴>
BABY JOB株式会社
脇 実弘 氏<略歴>
1968年大阪府出身。女性用下着メーカーで20年以上、プロモーション・商品開発・営業企画などを経験しマーケティング全般を統括。その後、大手食品商社でスーパーマーケット事業の営業企画部門の責任者を経て、2020年、BABYJOB株式会社で保育施設向けサブスクリプションビジネスの事業責任者。マーケット創出から取り組み、今もすべての人が子育てを楽しいと思える社会の実現に挑戦中。※本記事はLife-Tech KOBEより転載しています。
2021年より、世界規模のSDGs課題解決に挑むスタートアップの事業開発・海外展開を支援し、兵庫県・神戸市からグローバルな社会変革を生み出すシステム・プロダクトを創造することを目指し、グローバルなSDGs課題解決を目指す共創プログラム「SDGs CHALLENGE」が誕生しました。本プログラムに採択されたスタートアップを紹介していきます。
<サービス紹介>
おむつとおしりふきが使い放題になるサブスクリプション「手ぶら登園」を提供。多くの保護者は、毎月100枚ほどのおむつに自分の子どもの名前を書いてから保育施設に持ち込んでいる。このサービスは保護者に代わってメーカー直送で保育施設に届けることで、保護者の登園時の負担を軽減。さらに持ち込まれたおむつの管理をする保育士の負担も減らすことにもつながっている。
サービスの利用によって、SDGsに「手触り感」を
-SDGsチャレンジにご参加を決めた理由を教えてください。
脇氏(以下、脇):SDGsへの取り組みを推進している企業として、このようなイベントに参加することによって同じくSDGs関連の活動を行う企業との接点が持てることや、様々な事業での取り組みに関しての情報や新たなアイデアが得られることは、当社にとって非常に大きなメリットだと感じておりまして、可能な限りこのような取り組みには積極的に参加させてもらっています。また対外的に取り組みを発信する機会も限られている分、機会をいただいて弊社の活動を広めていくことは社会的にSDGsを推進していくことにも少なからず貢献できると思っておりますので、この度参加を決意させていただきました。
–BABY JOBでは、HPにも掲載するほどSDGsに力を入れていますが、どのような想いがあるのでしょうか
脇:正直なことを申し上げると事業を開始した当初は、特段打ち出しているわけではありませんでした。そのような中、事業が成長していくにつれて、サービスに関わった皆様より我々のサービスが、「SDGsへの取り組みに資するサービス」だと評価をいただくことが多くなり、そのように評価いただけるのであれば積極的に打ち出していこう、ということで発信していくようになったのがきっかけです。SDGsを掲げたことによって大きく2つの良い影響があり、1つ目として自分たちが「なぜこのビジネスをするのか」を再認識するきっかけになりました。SDGsに関するイベントに参加させていただくと、社会的意義を持った企業の話とたくさん触れ合うことができ、彼らのビジネスが持つ信念と我々が持つものが非常に似通っていることに気付きました。社会的に評価されている他社と自分たちがやっていることが似通っているのであれば間違いではない、と自信が持てるようになりましたね。2つ目は自信が持てた結果として、従業員にも事業の意義・意味を適切に発信し、社内で共通認識をもって事業運営が行えるようになったことです。もちろんSDGsというワードが飛び交っているかといわれるとそこまでではありませんが、従業員それぞれが自分たちの事業がどのように社会へ貢献しているのか認識できるようになったことで、全員が同じ方向を向き、会社として目指すべき姿に向けて一緒に進めるようになったと感じています。SDGsを掲げ、そこに向けて適切に事業運営していくことは、対外的な影響だけでなくインナーブランディングとしても影響があるのではと思いますね。
–SDGsを掲げることによって、ユーザーに対する影響はあったのでしょうか
脇:大前提として、ユーザーに対してSDGsというのはビッグワードすぎると感じています。基本的にはユーザーは目の前の自分自身が置かれている状況に課題を持っており、それを解決できる手立てを探しているはずです。その時にSDGsを押し付けるのではなく、まずは真摯にユーザーが抱える課題に向き合い、課題解決の手段として選択されるものがSDGsに紐づくものというのが理想的な姿ではないでしょうか。すべての人が意識的に社会貢献について考えるのではなく、目の前の課題を解決するための手段として、我々が提供するサービスがあり、サービスを利用することによって知らず知らずのうちにSDGsへの取り組みに関与していた、と課題解決された後に、認識してもらえると良いと思っています。
「市場創造」が、安定的な支援の提供に繋がる
–今後社会に対してどのような価値を提供していきたいと考えていますか。
脇氏:引き続き、現在のビジネスを通して子育て世帯が感じているペインを解消していきたいと思っておりますが、もっと大きな視点で言うと子育て世代が「無償労働」にかける時間を短縮することで、子育て本来がもつ「楽しさ」を再認識できるようにしたいと考えています。子育てがはじまると無償労働にかかる時間が急激に増えます。この問題に対して切り取られ方によっては非常にネガティブに見えている部分がありますが、我々はこの時間を可能な限り削減してあげることで、浮いた時間を「家族との思い出作り」や「家族との生活をより豊かにする」ための時間として使ってほしいと思っています。その結果として「子育てが楽しい」と感じる人が増え、社会の認識として広がっていけばより良い世の中になっていくと考えています。
-その世界観を実現するには、様々な問題を解決していかなければいけなさそうですね
脇:そうですね。この子育て分野においては各自治体でそれぞれ取り組みを進めていらっしゃいますが、難しいことに1つの課題を解決しても、また新たな課題が発生していきます。自治体だけで新たな課題の解決を図ろうとする場合、予算の関係で1つ目の課題解決を一旦終えて、スイッチしなければならない。毎年新たな生命が誕生しますので、安定的に支援を提供できる状態でなければ同じ課題をぐるぐるすることになり、いつまでも前に進めません。自治体が支援を入れたのであれば民間がその領域へ参入すれば良いのでは、と思う方もいらっしゃいますが、ビジネスをするには市場が小さく、参入してくるところがほとんどないのが現状です。このままでは一向に良くならないので、我々は仮にビジネスが小さくとも、すべての人が安定して支援を受けられるように、その領域へ進出していこうと考えています。課題が多様化し、さらには複雑化している現代において、遅かれ早かれこのような事象にいつかは直面するものであり、小さな市場を放置するのではなく、我々が最初に市場を作り出し、市場が拡大していく過程で、金融機関や自治体の協力を仰ぎ、最終的に民間企業が参入してくるようになればと思っています。日経クロストレンドにて「未来の市場をつくる100社」として取り上げられましたが、未だ市場になりえていない領域に、最先端のサービスを提供することによって、まさに「市場創造」をしていく企業でありたいと思っています。