<インタビューイー略歴>株式会社リプレニティ
代表取締役CEO 小林 恵梨子 氏<略歴>
新卒でPanasonicに入社後、国際機関、NPO、政府系機関で防災分野の国際開発事業に携わる。夫の海外赴任に伴いシンガポールへ帯同、出産を契機に退職後、装いの効果を体感し個人事業主として起業。帰国後、女性ベンチャー成長促進事業への採択を経て(株)リプレニティを創業。エシカル消費とサステナブルな未来づくりを目指している。※本記事はLife-Tech KOBEより転載しています。
2021年より、世界規模のSDGs課題解決に挑むスタートアップの事業開発・海外展開を支援し、兵庫県・神戸市からグローバルな社会変革を生み出すシステム・プロダクトを創造することを目指し、グローバルなSDGs課題解決を目指す共創プログラム「SDGs CHALLENGE」が誕生しました。本プログラムに採択されたスタートアップを紹介していきます。
<サービス紹介>
装いで個人の自己表現を実現し、衣服ロス削減・脱炭素社会の実現に貢献するパーソナルスタイリングサービス【ミニスタ®︎】を提供。日常的な服選びと購入に時間的・心理的負担のあるユーザーに対し、アプリに登録した手持ちの衣服での月額制のコーディネート提案を軸に、顧客との信頼関係を築いたパーソナルスタイリストがサステナブルな新規購入を提案する。
装いで、自分を取り巻く環境が変わる
-起業するまでの経緯ときっかけを教えてください。
小林氏(以下、小林):家族の海外転勤に伴ってシンガポールに行き、シンガポールからバングラデシュに通い、JICA技術移転プロジェクトで公共建築物の建設・改修能力向上に携わっておりました。そこで2013年にバングラデシュの8階建てのアパレル商業ビル「ラナ・プラザ」が崩壊した事件に遭遇し、耐震性を無視した違法建築物で、劣悪な労働環境で働くファッションブランドの縫製工場の方が多く亡くなられた現場を目の当たりにし、心を痛めました。
また、シンガポールで出産を経験し、出産をきっかけに仕事も辞め専業主婦をしていました。出産によって自身の体形やライフスタイルが変わって、なにを着たらいいのかわからなくなり、ファッション迷子になっていました。そこでファッションのことを勉強し、自分に合った服、髪型を研究し実践していると出会う人が変わるようになりました。家族にも昔と今の変わりように驚かれるほどです(笑)。装いを変えると自分を取り巻く環境が変わり、人からの扱われ方も変わるという体験を通じて、帯同先のシンガポールでパーソナルスタイリストとしてJICAのプロジェクトと並行して副業をはじめました。スタイリストとしてお客様の元に行くと、クローゼット内にたくさんの洋服が持て余されている現実を目にし、まだ着られる洋服が十分に活用されずに、トレンドを追って気軽に購入できるファストファッションが増えることに「ラナ・プラザ」事件とのギャップを感じました。これは、日本のクローゼットでも同じことが起きていますよね。今自分が持っている洋服の組み合わせを提案することで、新しい発見につながり次々に洋服を購入しなくても充実した生活を送ることができる。新しい服を購入する場合でも今自分が持っている服や体形、パーソナルカラーに合わせた適切な服を購入することで長く着ることができる。ファッションを楽しみながら、衣類ロスを減らし、環境問題や労働問題などファッション業界から引き起こされる社会問題を解決できるのではないかと思い起業しました。
-大企業に所属されておられ、企業の中に入るではなくなぜご自身で起業しようと思われたのですか?
小林:退職したきっかけは、家族の転勤や出産という外的要因が一番大きかったですね。実は、日本に戻った時はどこかの企業に所属した方が、大きいこともできるし、自身の経験も活かせると思い就職を検討しました。
ですが、起業しようと決めた理由として、1つ目はどこかの企業に所属してやるよりは、やっぱり自分にしかできないことをやってみたい、チャレンジしてみたいという思いが大きかったこと、2つ目は自分のアイデアは誰かが幸せになるはずだと直感的に感じられたこと、3つ目は「ラナ・プラザ」事件で、亡くなった方の無念を晴らしたい、このような事件が二度と起こらないようにしたいと思う気持ちがあったことから起業という選択をしました。日本に帰るタイミングで、行政が提供する女性ベンチャー成長促進事業に参加したことも起業という一歩を踏み出す要因になりましたね。周りの参加者は起業してから数年経っているにもかかわらず、まだ創業もしていない状態で飛び込んで、多くの刺激を得ることができました。思えば昔から幾度となく新規プロジェクトの立ち上げを経験し、当時から『切り込み隊長』と言われていました(笑)。そういうバックボーンもあり、新しいことに挑戦する抵抗感は全くなかったです。
服選びの時間的負荷を減らすことは、世界で求められていると実感
–SDGsチャレンジにご参加を決めた理由を教えてください。
小林:以前から起業家の仲間やサポーターを自ら探す活動をしている中で、プログラムやデモデイへの参加の機会を模索していました。知り合いから銀行内で開催されているプログラムがあると聞き、検索したところSDGsチャレンジがヒットしました。私自身も元々神戸に住んでいたことがありましたので親近感もあり、またテーマが「SDGs」ということで、私が解決したいと思っている衣類ロスの解決への近道になると思い参加を決めました。まだ2期目の開催ではあるものの、DemoDayでは市民の皆さんに直接発表できる機会があるというのは珍しく、ぜひ皆さんに思いをお届けできるよう挑戦してみたいと思いました。
-実際に参加されて、いかがでしたか?
小林:プログラムを通じて「ミニスタ」のサービスが横展開できるかどうか、先日ニューヨークに市場調査へ行ってきました。現地で感じたことは、世界中どこにいっても女性の感覚や悩むポイントは同じであるということです。どちらかというと、日本人よりも時間をかけて洋服を選んでいることがわかり、服を選ぶ時間負荷を減らすことは世界で必要とされているサービスだということを確認できました。世界で事業チャンスがあり、早速現地法人を立ち上げたいと思いましたね。
-今後社会に対してどのような価値を提供していきたいと考えていますか。
小林:毎日女性が自信を持ってお出かけでき、一日ごきげんに過ごせる、そんなポジティブに回る社会を目指し、ユーザーの手に届くサービスを提供していきたいと考えています。そして、私たちのサービスを通じて、洋服ができるだけ長く着続けられる社会を実現し、国内では年間50万トン以上が廃棄されている衣類ごみの削減につながることを目指していきたいと考えています。