プラスチックメーカーだからできること 海洋ゴミ問題の解決に、アップサイクルブランドで挑戦

2023.06.08

「捨てられたプラスチックから捨てられないプロダクトをつくる」を商品コンセプトに海洋プラスチックゴミ100%のプロダクトブランド「buøy(ブイ)」を展開する株式会社テクノラボ。「buøy」のラインナップは、トレーやキーチャーム、時計、ペンスタンドなどすでに30種類を超えています。エシカル市場の大きさは日本の100倍とも言われるイギリスなどの海外進出に向けて動き出しています。
プラスチックメーカーとして、事業を持続可能なものにしていくためにプラスチックの価値創造に挑戦をする中で、SDGs CHALLENGEがどのような影響をもたらしたのでしょうか。代表の林光邦さんにお話をお聞きしました。

株式会社テクノラボ
代表者:林 光邦
設立: 2004年8月
住所:神奈川県横浜市神奈川区青木町6-19
URL:http://www.techno-labo.com/

プラスチック製品のプロダクトデザインを手がける会社。社内プロジェクトで誕生した海洋プラスチックゴミ100%のプロダクト「buøy」は、海洋ゴミ削減への貢献や人々にゴミ問題を考えるきっかけを提供しています

日本発、海洋プラスチックゴミ100%の「buøy(ブイ)」を世界へ

「Buoy」を市場に出してみて、購入者の反応はいかがですか?

想定以上の売上げは出ていますが、これが「SDGs」という流行によって売れている側面もあると思うので、定着して良い使われ方に落ち着いていくまでには、まだ時間がかかりそうだと思っています。

我々が目指している指標は「どれだけ海洋ゴミを社会に戻せたか」ということです。そのゴミはトン単位の話になるので、売上げ以上に、何トンを社会に戻すことができたのかが大事です。トン単位でゴミがぐるぐると回る仕組みを作るために、買う人の市場と供給する人の市場ができないと実現につながりません。そのために、きちんとした売り場を確保し、販売ルートをしっかり作ることに試行錯誤しながら取り組んでいます。

海ゴミと言ってもいろんなゴミがあると思います。例えば、国によってゴミにも違いがあるのですか?

全然違うんですよ。アフリカのゴミは原色に近い色が出ますし、石垣島あたりは中国からのゴミが圧倒的に増えて赤や紫といったカラーが強く出ます。日本海あたりのゴミは少し寂れた感じの色になるし、瀬戸内海ではとても淡い色が出る。回収する地域によってゴミの特徴も違ってくるんです。プラスチックへの着色は、「この色」という決まりがあるわけではなく各国が売れそうな色を判断しているので好みが出るんです。
だから出てくるゴミも国ごとに色味の特徴が出ます。ゴミ同士の色が混ざり合うことは基本的にないのですが、材料が溶ける融点が低いと絵の具みたいに流れて、反対に融点が高いとモザイクのようになって残ります。ゴミの色からしか色出しをしていないので、「Buoy」はすべて1点ものです。

2023年は海外市場にも挑戦されようとしていますね。

今年はエシカル市場で日本の100倍と言われるロンドンへ初めて出店をします。すでにロンドンやニューヨークで「Buoy」を取り扱ってくれている店舗もあるのですが、本格的に海外市場に挑むためにまずは展示会などへ出店していこうと思っています。年内はドイツへ行くことも検討しています。

 

事業の前進を後押しする、心強いメンターと行政の人たち

SDGs Challengeにはどのような経緯で参加されたのでしょうか?

僕らの本業はプラスチック製品の製造です。その中で、捨てられるプラスチックをもう一度社会に戻す活動をしたいという想いからプラスチックのアップサイクルに取り組み、海洋プラスチックゴミ100%のプロダクトブランド「buøy(ブイ)」をつくりました。商品展開を拡げるために、今後はポップアップ出店から常設店舗をどのように増やしていこうかと考え始めた時期でしたね。「SDGsを切り口に企業が活動するとはどういうことなのか」を考える機会をつくりたいと思っていたところに、SDGs CHALLENGEの存在を知り、興味を抱き参加しました。

SDGs CHALLENGEのプログラムへの力の入れようは想像以上だったと感じました。メンタリングしてくれる方たちは、常に立場を対等にしながら、どんなことを聞いても確かな根拠から考えを出してくれて知識量が豊富で、事業や組織づくりの学びを得ることができました。

メンターの方たちとどのような形でセッションをしていたのでしょうか?

プログラム期間中の集まりは、リモート参加が8割、リアル参加が2割くらいだったと思います。それぞれ参加企業の方たちが、今抱える課題を出して、そこにコメントをもらうという流れで進んでいきました。みんな同じような課題を抱えている中で、問題に対する解釈や解決方法などが聞けて、自分の事例と比較ができるのがよかったですね。

最後は経営者の直感で判断することもありますが、どれだけロジックで直感を補えるのかは経営には大事だと思っています。メンター陣の中には海外の大学出身で現在も世界の情報に精通する方たちも多く、価格やブランディングの仕方、それに組織論などを学びました。このプログラムで過ごした時間は濃かったなと思いますね。

SDGs CHALLENGEに感じた魅力があれば教えてください。

SDGs CHALLENGEという企画自体の魅力もありますが、そもそも神戸というところは魅力的な企業や面白い人たちを集められる町なんだなと感じましたね。行政の方も一緒になって動いているのも印象的でした。
我々はゴミが漂着する地域にいるボランティア団体、行政の方たちと連携して、海ゴミから商品をつくり、産地に注目してもらいたいという想いで活動しています。ただ、海ゴミは漂流物であり所属のはっきりしないものなので、行政側として動きの取りづらさもあります。でも、誰かが拾わないといけなくて、行政とも一緒になって取り組まないとなかなか解決できない問題です。そうした中でも、神戸市は社会問題を解決することに積極的で「官と民との協力ってこう言う形だったら気持ちいいよね」と感じました。プログラムを通して会った方たちは、神戸に対する自分たちの考え方をみなさんが持っていて、僕らとしても一緒にやりたいと思わせてくれる方が多かったですね。熱かったです、兵庫の人たち(笑)。

行政との連携に可能性を感じられるプログラムだったのですね。

今や、企業が単体で自社の利益のためだけに動く時代でもないと思うんですよね。次世代のために目指す方向は、企業も役所も一緒だと思うんです。そのために企業はよりパブリックなセクターに近い仕事も必要でしょうし、反対にパブリックなセクターの方たちは民間的なアグレッシブさやスピード感を持つことが必要だと思っています。その点で、SDGs CHALLENGEはとてもよい実験場所になっていると思います。行政と民間が「SDGs」という切り口で本気で取り組むプログラムでしたね。面白かったです。

 

プラスチックの価値を次世代へつなぐ

神戸の企業や自治体の方たちとも交流されたと思いますが、プログラムを通して兵庫県や神戸市という地域に対してビジネス観点での可能性は感じましたか?

このプログラムをきっかけに、神戸という場所やロケーションにはとても関心が高くなりました。我々のビジネスはいかに海ゴミを収集・商品化できるかという点が重要です。海ゴミの漂着は九州地方や北陸地方が多く、関東からだと少々距離があって、九州や北陸にも行くことを考えると、中間地点とも言える神戸を拠点のひとつとすることも検討できると思っています。どこに行ってもご飯もとても美味しいですしね(笑)。
神戸市に足を運ぶ機会ができ、コンパクトで居心地がいいまちだなと思いましたね。人の距離感も程よくて、無理せず目が行き届く感じがいい。関西空港は近いし、東京にも行きやすく、海岸にも出やすいのでなかなか良いロケーションだなと思いました。

–どのような想いを持って、今後のテクノラボをつくっていきたいと考えていますか?

大きく2つあります。ひとつは、自分のやっている仕事を次世代にちゃんと残していきたいと思っています。私はプラスチックという素材があったからこそ、ご飯を食べさせてもらってきました。環境配慮や保護の観点からプラスチック産業が悪者になったまま、自分の世代で終わるというのは不本意ですし、会社の規模を大きくすること以上に責任を持って次の世代にバトンタッチできるものを残したいんです。

もうひとつは、海ゴミの事業や海洋系の仕事に携われる機会があればどんどんチャレンジしようと思っています。経営で一番大事なのは「運」なのではと思ったんですよね。例えばくじを引いたとして、3回のチャレンジで当たる人もいれば、100回目でようやく当たる人もいるわけですよね。運が悪いならば回数を重ねる必要があるわけです。だから私としては、当たるまでくじを引き続ける、そんな想いを持って挑戦し続けていたいです。
会社の成長や売上は社会とどれだけ関われたかという指標だと思うし、利益は関わった中でどれだけ感謝されたのかという指標だと思うので、試行錯誤しながらよい兆しも見えてきているのでポジティブに捉えて、事業が社会とうまくリンクしている状態をつくりたいです。それって、生きてる上ですごい楽しいことなんじゃないかなって思いますね。